当サイトでは、狩猟者育成の一環として『のとしし団』流のイノシシの捌き方を公開しております。
今回は『成獣イノシシの後足の捌き方』を紹介します。
後足解体までの大まかな流れ
当社ではイノシシの成獣は皮むき後、「前足×2」「胴体×2」「後足×2」の6つの枝肉に分けてから解体していきます。
以下が、枝肉となった「後足」です。
皮むき〜枝肉にするまでの工程は別の記事で投稿しますが、枝肉になった「後足」を解体するには以下の手順で進めます。
1.骨盤を外す
2.スネの骨を外す
3.大腿骨を外す
4.部位ごとに精肉する
1.骨盤を外す
まず、まな板に置いた状態が以下。
まずは中央左側の骨盤を外していきます。
最初に包丁を入れるのは以下の部分。緑線に沿って切っていきます。
端に向かって切ったら、次は反対側へ。
骨盤の下を切れるところまで切ったら、大腿骨と繋がっている部分「股関節」があります。
股関節は膜で覆われていますので、刃先で露出させましょう。
次に、股関節を挟んで反対側、再び骨盤に沿って肉を剥がしていきます。
こうすることで股関節のスジを露出させることが出来るので、「大腿骨真ん中のスジ」と「股関節回りの肉と繋がっている部分」を切りましょう。
股関節回りを切ると、骨盤が大きく開くようになりますので、骨盤を持ち上げつつ剥がしていきましょう。
先に骨盤の胴体側(下画像の左側)を切り離すようにすると、それ以降が剥がしやすくなります。
骨盤の反対側の端は、すでに外した側と同じく出っ張りがあります。そのため、包丁を骨に沿わせているだけでは切れませんので、出っ張り部分の先を切る必要があります。
骨盤が外れました。
横から見ると、こんな感じ。
次は、スネの骨を外します。
2.スネの骨を外す
スネの骨を外すには、まず以下のポイントから切り始めます。
「スネ肉は後足も前足も “腹側” から切り始める」と覚えましょう。
スネの先に向かって切ったら、
切った部分を持ち、足全体を立てます。
次に足先から骨に沿って肉を切り剥がしていきます。
スネの骨は “太い骨” と “細い骨” の2本があるのですが、この2本が露出するように切るのがポイント。
膝の関節が見え、膝の筋が切れるところまで切りましょう。
次に、2本の骨の間の肉が取れるように、以下の緑線に沿って切っていきます。
骨の間を切ったら足をまな板に寝かせ、太い骨の反対側(緑線)を剥がすように切っていきます。
切り上げていくと関節に当たりますので、関節を迂回するように(以下の緑矢印)切ります。
関節を迂回した直後のポイントで関節を外すことが出来ますので、以下のように切ってしまいます。
関節の間には関節をつないでいる筋がありますので、これをしっかりと切りましょう。
筋を切るとザリッという音がします。
あとは、関節周りの肉を剥がし、スネの骨に沿って肉をそいでいきます。
骨の間の肉も外れてきますので、しっかり取りましょう。
最後は骨の端で切り離して終わり。
スネの骨が外れました。
3.大腿骨を外す
次は、大腿骨を外していきます。
大腿骨を露出させるには、以下の指の先にある “肉のつなぎ目” から切り始めます。
まず、上記のつなぎ目に刃先を入れ、上にある肉を剥がしていきます。
最初は薄い部位ですが、剥がしていくにつれて奥に大きくなっているのが分かります。
肉の間の膜を切るようにして、さらに深く切っていきます。
すると、大腿骨が露出してきます。
大腿骨が露出したら、骨に沿って肉を剥がしていきましょう。
膝関節周りは出っ張っているため、迂回するようにして切っていきます。
次に、大腿骨の反対側の肉も剥がしていきます。
骨に沿って剥がしていきましょう。
ただ、反対側の膝関節側にはいわゆる “膝の皿” があります。(緑丸部分)
ここは骨に沿って切るだけだと皿を切ってしまうことがあるため、切っ先を流すようにして軽く切っていきます。
膝の皿が露出したら、あとは大腿骨を外していきます。
骨の下に包丁を突っ込み、まずは膝関節側に向けて骨を外しましょう。
膝関節側が切り離せたら、大腿骨を立て、股関節回りを丸く切りとります。
大腿骨が外れました。
最後に、膝の皿を取り除き、骨抜きは終わりです。
以下、骨抜き前後の比較。(方向など同じです)
あとは、各部位に精肉していきます。
4.部位ごとに精肉する
まず、上記の状態での各部位を確認。
後足の部位は「シンタマ(前モモ)」「ウチモモ」「外モモ」「ランプ」「スネ」の5つ。
シンタマ
僕らはシンタマ、ウチモモ、ランプ、スネ、モモの順番で精肉します。
まず、シンタマをつかんで、外モモとの間の膜を剥がしていきます。
白い脂肪(または膜)が見えたら、それに沿って切る。
次に、ランプ部位は四角い形をしているため、ランプ肉の一辺に対して平行になるように(以下の緑線)切ります。
これで、シンタマが取れました。
シンタマは以下の緑矢印部分にリンパがあることがあるため、残っていれば取り除きます。
ウチモモ
次に、ウチモモを取りましょう。
ウチモモは、スネ側の以下のポイント(緑丸)の位置に、指が入るだけの隙間があります。
まずはここに指を突っ込み、穴を開いてしまいましょう。
そうすると、以下のように開きます。
この状態でウチモモを切り取っていくのですが、切る部分を分かりやすくするため、番号を書いてみました。
ウチモモを外すには、2と3の間(緑線)の膜を切り剥がしていきます。
2と3の間を切る際、太い血管が邪魔になりますが、これは外モモ側に残すように切っていきます。
2と3の間を切っていくと、シンタマと同じように白い脂肪(または膜)が見えてきますので、以下緑線で切り離します。
これでウチモモが取れました。
肛門に近く、かつ “皮むきで毛が残りやすい部位” なので、毛のチェックは丁寧に。
ランプ
次はランプを外します。
まず、先ほど残した太い血管を取り除きましょう。
血管を指で持ち上げ、血管の下に包丁を入れ、浮かすようにして剥がします。
血管が取れたら、ランプ肉が四角くなるようにカットします。(以下緑線を参考に)
ランプが取れました。
外モモ+スネ
最後に、外モモとスネを外します。
以下の緑線より右側がすべてスネ肉となりますので、緑線に沿って肉を剥がします。
外モモとスネが取れました。
最後に、外モモの以下の緑丸の位置にはリンパがありますので、白い脂身と合わせて取り除きます。
緑線に沿って切り取りましょう。
これで、後足の部位分け完了です。
以上、成獣イノシシ「後足」の解体・精肉方法の紹介でした。
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