のとしし肉について

【のとしし】部位別、オススメの調理法(猪肉)

【のとしし】部位別、オススメの調理法(猪肉)

こんにちは。のとしし団の中村です。

私たちはイノシシを捕獲し、精肉して販売しているのですが、

 

『イノシシって、どうやって食べたらいいの?』

『イノシシって、どうやって調理したら美味しいの?』

 

という相談を、よく受けます。

 

我が家ではイノシシ肉を日常的に食べているので、機会があれば答えているのですが、

今回は今まで食べてきた感想を元に、イノシシの部位別の特徴と、オススメの調理法を書いてみます。

 

 

ロース

>何にしても外れない部位

ロースとは、胴体の背中側、背骨を挟んだ左右にある部位のこと。”背ロース” と呼ばれることもあります。

この部位の特徴は「肉質が柔らかい」「脂がのりやすい」「脂がのっても肉とのバランスが取れている」「大きな血管が走ってないせいか血が残りにくく臭みが “ほぼ” ない」「大きさが均一でスライスしやすい」など。

 

価格が高いだけあって基本的にどう調理しても美味しく、

・スライスして塩コショウで焼く

・スライスしてボタン鍋に

・厚切りでステーキに

・厚切り/スライスで串焼きに

・厚切りでカツに

など、”脂の甘さ” と “肉の旨味” を味わうことができるような、シンプルな食べ方がオススメです。

 

逆に、これは個人的な感想なのですが、”すき焼き” などの味の濃い食べ方はロースの旨さが分かりにくくなるため、「ちょっともったいないな」と感じてしまいます。(間違いなく美味しいんですけれどね)

特に冬(11月下旬~1月上旬)の “のとしし” は脂にやさしい甘さと香りがあり、これを活かすのであれば薄い味付けの方が向いています。(これは他の部位も同様)

 

 

肩ロース

>肉質がロースよりも固めで、肉の味が濃いめ

 

上記のロースより、頭側にあるロースの部位。

ちょうど肩~背中にかけての部位で、肉質はロースに近いのですが「ロースよりもウデに近いため肉質が固め(=歯ごたえがある)」「太い血管が通っており、のとしし団ではイノシシを逆さ釣りにするため肉の味が濃くなりやすい」「冬場は脂がのりやすい(年明けの以降のオスは脂肪がヨロイに変わるため脂は除去します)」「脂より肉が多め」「ロースよりも大きい」などの特徴があります。

 

ロースに比べると歯ごたえがあり、イノシシらしい味が濃くなるため、『ロースよりも好き』という猟師も少なくありません。

 

一方で、イノシシ肉を食べたことがない人にとっては『固い』『味が濃い=癖がある』と思われることもあるようですので、

・スライスして味が濃いめの鍋(すき焼きなど)に

・味噌/醤油こうじ焼き

など、肉が固くなり過ぎない調理や、肉が柔らかくなる調理臭みなどを抑える味付けがオススメです。

味噌こうじ漬け

 

 

ランプ

>ロースに似てるが、ロースよりも味が濃いめで、歯ごたえも良し

 

上記のロースより足側にあるロースの後部位。ちょうど尻~腰にかけての部位で、ロースによく似た肉質です。

 

特徴としては「大きなスジがなくてロースと同じくらい柔らかい」「一方で足に近いせいかロースより歯ごたえもある」「太い血管もないため味にクセがなくて食べやすい」「冬場は脂がのりやすい」「(脂がのってるときは)肉より脂が多めになりやすい」「ロースよりも小さい」など。

 

基本的にロースと同じようなシンプルな食べ方が向いており、

・スライスして塩コショウで焼く

・”少し厚めに” スライスしてボタン鍋に

・厚切り/スライスで串焼きに

・厚切りでステーキに

などがオススメ。

個人的には、あえて厚めに切ることで歯ごたえを楽しむ食べ方が好きです。

 

 

ヒレ

>脂身の全くのらない、柔らかい部位

 

腰の内側にある部位で、ロースの “背ロース” という表現に対して、”内ロース” と呼ばれる部位。

各イノシシから0.5~1%ほどしか取れない希少な部位で、100kgほどの大きな個体であっても700~900gくらいしか取れません。

 

特徴しては「ロース以上に柔らかい」「内部に太い血管などが通らないためクセも “ほぼ” ない」「小さいながらも太さが均一」という感じ。

 

・一口大に厚めにスライスしてカツに

・低温でじっくり焼いてヒレのステーキに

などがオススメ。

脂がのらないため、肉そのものの味を楽しめる調理が良いでしょうか。カツなら下味は濃いめに、ステーキなら下味は薄めでソースは濃いめが合うように思います。(個人的な印象ですが)

 

 

シンタマ(マエモモ)

>肉の形はいびつだが、スジが少なくスライスに向く

 

後足の前モモの部位。

「肉は歯ごたえがある」「しかしスジは少なく、厚めにカットしても食べやすい」「脂はのるが少なめ」などの特徴があります。

 

肉質はしっかり目で、強火で調理すると固さを感じるため

・スライスしてボタン鍋に

・厚めに切って低温調理のステーキに

などがオススメかと思います。

脂より肉の赤身を楽しめる部位なので、赤身が強調される調理法が良いのではないでしょうか。

 

 

外モモ

>冬場は「厚めの脂」と「歯ごたえのある赤身」が両立する部位

 

夏場は脂がのりませんが、冬になるとシンタマのような「歯ごたえのある赤身」と、ランプと同じくらいの「厚い脂」がのる部位です。ランプや肩ロースに比べて比較的値段が安い部位であるにも関わらず、同じくらいの脂がのるため、冬場はボタン鍋としての需要が高まります。

 

赤身の部分は「足の肉」らしく旨みが強めで、火を入れすぎると固い食感となる為、

・薄くスライスしてボタン鍋に

歯ごたえのある食感を活かして薄くスライスして、すき焼きに

・脂の多い肉を薄くスライスして串焼きに

とするのが向いていると思われます。

 

 

バラ/前バラ

>年中通して脂身がのる部位

アバラ回りの肉なので「バラ」と呼ばれる部位。豚のバラ肉と似ており、夏場でも脂身がのり(脂2:赤身8くらい)ますが、冬場になると脂9:赤身1のような割合にもなります。(スライスしても真っ白)

 

「前バラ」はバラよりも頭側の部位で、バラの厚みを全体的に薄くしたような感じです。太い血管があり、それを取り除く関係で形が歪になりやすく、また肩ロースと同じ理由で肉の味が濃くなりやすい部位になります。

 

豚のバラと違うのは、イノシシの脂身は触ると溶けるくらいに柔らかいため、煮込み過ぎると脂身が小さくなってしまう点。

そして、冬場のメスの脂身は一度溶けると冷めても固まりません。(これは11月末~1月上旬の “のとしし” の全部位で共通)

 

また、これは個人的な感想なのですが、脂身のないバラ肉は「赤身と脂身の間の膜」が固く感じられるため、焼いて食べるだけだと膜が気になるかもしれません。(膜の部分だけ隠し包丁を入れると食感が変わるかも)

 

そのため、

・脂身の少ないバラを煮込む(角煮、チャーシューなど)

・脂身の多いバラを薄くスライスして焼く

・脂身の多いバラを薄くスライスしてボタン鍋に

・脂身の多い厚めのバラをベーコンやパンチェッタに

などが向いているのではないでしょうか。

 

自家製パンチェッタ
自家製パンチェッタ
自家製パンチェッタ

 

 

ウデ

>夏は赤身、冬は赤身と脂身が両立

 

後足における外モモのような部位で、夏場は赤身だけですが、冬は厚めの脂身がのる部分が出てきます。

ただ、外モモと大きく違うのは太めのスジがあること。肩甲骨や前足の骨が直接肉に触れている為、骨と肉が繋がっている部分の太いスジがどうしても残ります。これはスライスしても少し食感として残りますので、モモよりも使い勝手は良くありません。

 

とはいえ、肩ロースや前バラ同様 “味の濃い部位” になりますし、真冬であれば厚めの脂がのりますので、価格を考えるととてもお得な部位となります。(ブロックで1kgあたり税抜き2500円)

 

個人的には大好きな部位で、よく食べるのですが

・脂身のある肉を薄くスライスして塩コショウで焼いて

・脂身のある肉をスライスしてボタン鍋に

・脂の有無に関係なくスライスして味が濃いめの鍋(すき焼きなど)に

・脂身の無い肉を筋繊維にそってスライスし、ジャーキーなどに

・味噌/醤油こうじ焼き

など、シンプルな食べ方か、肉が固くなりすぎないような調理方法がオススメです。

 

 

ウチモモ

>冬でもあまり脂がのらない部位

 

後足の外モモに対して、内側にあるモモ肉の部位。夏場はもちろん、冬場でもあまり脂がのりません。

肉質としては外モモに比べて柔らかく、火を通しすぎてもあまり固くなりません。

 

その脂の無さや、柔らかさを活かして、

・筋繊維にそってスライスし、ジャーキーなどに

・その他燻製

・一口大にカットしてカツに

などがオススメです。

 

道の駅『のと千里浜』で販売されている人気の “のとししジャーキー” は、このウチモモを使っていますよ!

 

 

スネ

>最初は固いけど、煮込めばとっても柔らかくなる

 

私たちが扱っている商品の中で、一番安い部位「スネ肉」。

スネ肉はスジが多く集まる部位なので、普通に焼いたり、揚げたりして食べることはできません。しかし、その一方で1~2時間ほど煮込むとスジがほぐれて溶ける(ゼラチン質に変わる?)ようで、一気に柔らかくなります。

また、スジが多いせいなのか、他の部位と比べて臭みがほぼないのも特徴。ただ、旨みはしっかりありますので、煮込んで味が薄くなるなんてことはありません。

 

なので、オススメの調理法としては

・煮込み(シチューやカレーなど)

・煮込んでから焼く、揚げる

という、まず煮込んで柔らかくしてから使うのがオススメです。

 

のとししで作ったシチュー

 

 

幼獣リブロース

>全体的に柔らかく、脂の有無も選べる

 

私たちの施設では、おおよそ15キロ以下のイノシシの場合は各部位に分けず、”幼獣リブロース” や “幼獣前足・後足” として部位分けします。この幼獣リブロースは、いわゆる上記のロース・肩ロース・バラ・前バラが合わさった部分になるのですが、やはり幼獣の肉なだけあって「全体的に柔らかい」「脂がのってる個体もいれば、そうでもない個体もいる(選べます)」「成獣の肉に比べて旨みはイノシシ独特の味は薄い」「解体手順の関係で肩ロースの脂はいびつになる」というのが特徴の部位です。

 

また、これは個人的な感想なのですが、「少しだけ乳臭い個体」もいる気がします。

ただ自宅で捌いてる時だけに感じることですし、調理してしまえば全く分かりませんけれどね。

 

オススメの調理法としては、

・低温でじっくり煮込み(味濃いめ)

・骨付きでタレに漬け、BBQで焼く(骨をかじるように食べる)

など、加熱しても柔らかい肉質を活かすようなものが良いのではないでしょうか。

 

 

幼獣前足・幼獣後足

>成獣に比べて柔らかいが、意外と食べごたえがある

 

幼獣リブロースと同様、おおよそ15kg以下のイノシシから取り出す部位。幼獣前足はウデとスネ部位からなり、幼獣後足はランプ・外モモ・ウチモモ・シンタマ・スネからなります。

特徴も幼獣リブロースと似ていますが、こちらはほぼ脂がのりません。ただし、やはり足部位になるため成獣に比べれば柔らかいのですが、リブロースよりは締まった肉質です。

 

オススメの調理法としては、

・低温でじっくり煮込み(味濃いめ)

・煮込んでからコロッケの具材などにする

など、基本的にはスネ部位と同様、煮込む、またはまず煮込んで柔らかくしてから使うのが前提となるかと思います。

 

 

後足

>幼獣後足よりも、少し大きい部位

 

幼獣後足にするほど小さくはないけれど、各部位に精肉するほど大きくもない。そういう個体の場合のみから取り出す部位です。幼獣後足と違うのはランプ・外モモ・ウチモモ・シンタマからなり、スネ部位は含まれないということ。

 

比較的大きな部位で、全体的に締まった肉質になるため

・薄くスライスしてボタン鍋に

歯ごたえのある食感を活かしてスライスして、すき焼きに

など、外モモやシンタマと似たような調理法がオススメです。

 

また他にも、「大きさと形を活かして骨付き後足をハムや燻製に」という使い方も可能ですので、ご希望の場合はご相談ください。(スネとスネの骨、ご希望があればアキレス健も残して提供が可能です)

 

 

 

以上、個人的な感想が多めの内容となってしまいましたが、イノシシの部位別の特徴と、オススメの調理法の紹介でした。

これからイノシシ肉の調理に挑戦してみようと思う方は、参考にしてみてください。

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