今回は弊社で扱う猪(のとしし)の『ウデ』部位について説明します。
肉の特徴や、切った時の断面、調理した時の食感などに触れていきます。
ウデはどの部位か?
弊社において、猪肉の部位は以下のように分けられます。(点線は内側です)
この中で、『ウデ肉』というのは以下の部位になります。
大まかに言えば『前足の途中から、肩の手前までの範囲』ですね。
隣接する部位としては、ウデの上が「肩ロース」、後ろが「バラ」、胸側が「前バラ」、前足の先は「スネ」となります。
また、頭側はリンパなどがあるため、実際はもう少し小さくなります。
実際の精肉後の、見た目は以下のような感じです。
上の図と同じく、猪の左ウデ部位となります。
左側(手で持っている部分)が頭で、上が肩ロース、下が前バラで、右側(正しくは右上)がバラに隣接していたことになります。
ウデ肉の特徴
ウデ肉の特徴としては、以下の4つが挙げられます。
1.夏と冬で脂の有無の差が大きい
2.太いスジがある
3.後ろ足よりも旨味が強いと言われる
4.火を通すと固くなりやすいが、煮込むと繊維でほぐれるような肉質となる
1.夏と冬で脂の有無の差が大きい
ウデ肉は季節によって脂の有無に大きく差がでる部位です。
春〜秋において捕獲された猪では、基本的に脂はありません。晩秋(10月中旬)〜2月下旬ごろに捕獲された猪であればウデ部位にも脂はのってきますが、スネに近い部分は真冬でも脂がのりません。脂は首元や肩ロースに近い部分ほど多く、スネや後ろ側に近づくにつれて少なくなって行きます。
また、脂の乗る冬場であっても、成獣のオスは肩ロース〜ウデ〜バラにかけての範囲が『ヨロイ』と言われる硬い脂で覆われますので、皮むきでヨロイを削り落とす結果、ヨロイを纏った猪のウデ肉は脂がほぼ付かないことになります。
2.太いスジがある
ウデ肉は弊社において「低価格の部位」となっています。その理由は、ウデ肉には太いスジがあるため。
どうしても、ロースや肩ロース、ランプやシンタマ(前太もも部位)に比べると固くなりがちで、調理が難しいが故に、他の部位よりも価格を低く設定してあるのです。
以下が先ほどのウデ肉を裏返したところですが、緑の矢印を起点として、緑線に沿ってスジが入っています。
見てわかるように、スジが交差するように入っているため、そのままでは扱いにくいです。
そのため弊社では、小さな個体についてはそのままの形で精肉しておりますが、スジが気になってくる大きな個体(おおよそ40kg〜の個体)については、以下のようにスジに沿うように二分割して精肉・販売するようにしております。
裏返すと、こんな感じ。右が頭側で、左が胴体側となります。
3.後ろ足よりも旨味が強いと言われる
以上のように、ウデ肉は太いスジがあり扱いにくい部位ではあるのですが、その一方で後ろ足に比べて前足の方が旨味が強いと言われます。
その理由は『猪は後ろ足より前足をよく使うから』と言われていますが、確かに猟師さんやお客様からの意見を聞いても、後ろ足より前足の方が美味しいという評価が多いです。
4.火を通すと固くなりやすいが、煮込むと繊維でほぐれるような肉質となる
これは私(中村)が自宅で試した結果なのですが、ウデ肉は煮込みにも向いています。
火を入れると固くなりやすい部位ではあるのですが、長時間煮込むことで繊維でほぐれるような柔らかい肉となりました。
煮込むことで脂身と肉がほろほろ崩れるような「バラ」や、コラーゲンが溶け出し “とろみ” がつくような「スネ」とは違い、肉の繊維と繊維はほぐれるのですが、細かい繊維自体は残るため、柔らかいのに歯ごたえもある食感となります。肉質のイメージとしては「鳥の胸肉」に近いでしょうか。
私はルンダンという料理に使用しましたが、時雨煮などにも最適だと思います。
「スジを取り除く」「固くならないように調理する」など、他の部位に比べて一手間必要で、比較的プロや玄人向きの部位となりますが、手間をかけた分だけ美味しくなるウデ肉。冬場はロースと遜色ないほどの脂がのることもありますし、何よりお安く提供できるのが一番のウリです。
私個人的にも大好きな部位の一つで、スライスを焼肉に、スジを取ってステーキに、一口大に刻んで煮込みに、バトン状に刻んで春巻きにと、使い勝手は悪くありません。
切った時の断面を紹介
最後に、ウデ肉のスライスを元に、ウデ肉の断面を載せておきます。
赤線が切った部分で、その下が断面となります。
断面:その1
頭に近い部分はスジもなく、見た目もロースにそっくりです。
断面:その2
この位置でスライスすると、以下のように肉右側にスジが入ります。スライスであれば薄いため気になりませんが、厚くカットする場合は取り除くのが良いでしょう。
断面:その3
もう一方のスネに近いウデをスライスしたところ。頭側は前バラに近いのもあり、バラ肉のような層状の肉質が混ざります。
断面:その4
上の写真の肉とは別ですが、比較的小さな個体だったため、ウデを二分割せずにスライスしたところ。
スネに近い部分(以下左側)はスジが横に入り、スライス中央には縦に入るスジの断面が見えています。
以上、猪(のとしし)の『ウデ』部位の説明でした。
ご購入を検討されている方は、参考にしてみてください。
また、その他の部位などについて質問がある方は、『お問い合わせ』からメールかお電話でご連絡くださいませ。